車のマフラーからの大量の水が漏れて来る原因は?故障の可能性はあるのか解説!

「車はマフラーが水没しても問題ない」という話を耳にしたことはありますか?

私自身、大雨で「これぐらいなら大丈夫か?」と冠水した道路に突入を試みた結果、残念ながらダメでした(車が故障)…という経験があります(涙)

この度取り上げるのは、そんなマフラーにまつわる話題です。

アイドリング中に車の後部から「ポコポコ」と奇妙な音が聞こえたので確認してみたら、水が漏れているのを発見しました!

マフラーから漏れ出している水ですが、果たしてこれが車に悪影響を及ぼすことはあるのでしょうか?

そもそもマフラーからなぜこんなにも水が漏れ出るのでしょうか。

そこで、プロの自動車整備士が「マフラーからの水漏れ」及び「マフラー内の水が問題を引き起こさないか?」について詳しく解説します。

 

車の排気には水蒸気が含まれている

先に結論を言うと、マフラーから水が漏れてもそれは故障の兆しではありません。

自動車の排気には「水蒸気が約15%」含まれているからです。

この水蒸気は、排気温度が高ければガスとして排出されます。

しかし、エンジンが冷えている時(65℃未満)は、凝縮水となってマフラーの底に溜まるのです。

そしてアイドリング中に排気圧によって少しずつ外に押し出されています。

これが冒頭の水漏れの正体です。

では排気中の水蒸気はどのようにして生成されるのでしょうか?

 

燃料成分の水素が酸素と結びつく

水蒸気の生成源は「燃料の燃焼」です。

これはガソリンに限らず、水素を含むあらゆる燃料が燃える際に当てはまる話で、軽油や灯油、ガスを燃やした際にも水が生成されます。

これは燃料に含まれる水素が、燃焼によって大気中の酸素と結びつき、水蒸気を生み出すからです。

従って、マフラーから水が出るのは正常な現象です。

その他にも、自動車特有の理由が存在します。

 

触媒により水が生成される

ガソリンエンジンからの排気ガスには、

・炭化水素

・一酸化炭素

・窒素酸化物

などの有害物質が含まれています。

 

これらを大気中に放出するわけにはいかないため、触媒装置を通じてこれらの物質を同時に分解・無害化しています。

この過程で、炭化水素は水と二酸化炭素に変換されるため、ここでも水(水蒸気)が生成されるのです。

特に触媒装置は非常に重要な役割を持ち、窒素酸化物は過去に光化学スモッグや、酸性雨の原因となる大気汚染物質とされていました。

最近ではこれらの問題を聞くことが少なくなったのは、触媒装置の技術進化によるものと言えるでしょう。

 

マフラーから水が漏れるメカニズムは以下の通りです。

1. 燃料の燃焼や排気ガスが触媒を通過することで生成される水蒸気が、

2. 低温時に凝縮されマフラーの底に水として溜まり、

3. 排気ガスの圧力によって水滴として外に落ちる

以上の理由により、マフラーから水が漏れる現象は「正常な反応」とされています。

ただし、水の漏れ自体は問題ないものの、「マフラー内に水が溜まること」については気になるところです。

 

冬はマフラーの水の量が増加

マフラーから漏れる水の量は、気温によって変わります。

夏の暑い時期は水分が蒸発しやすくなり、マフラーからの水漏れを目にする機会は減ります。

一方、冬の寒い時期は車内部との温度差が大きくなり、結露が生じやすくなるため、マフラーに溜まる水の量が増加します。

 

長時間マフラーに水が溜まるのは避ける

最近のマフラーではステンレス製のものが主流で、これは錆びにくい特性を持っています。

しかしながら錆びにくいとはあっても、完全に錆びないわけではありません。

特にマフラー内部に水が、長時間溜まっている状態は避けた方が良いでしょう。

 

マフラーが錆びて穴が開いてしまう事例には、融雪剤や潮風など外部の影響もありますが、内部に水が留まり続けることも無視できない要因です。

それでも適度な距離を運転すれば、排気ガスの圧力とマフラー自体の熱で内部の水は自然と蒸発します。

ただし、日常的に短距離のみの運転が多い場合、マフラーが十分に熱くならず水が蒸発しないことも。

そのため、意識的にマフラーから水を排出する工夫が必要になるかもしれません。

水抜きの方法はシンプルなので、気になる方は試してみてください。

 

アクセルを吹かせば水が出て来る

マフラー内に溜まった水を排出するには、空ぶかしが効果的です。

ニュートラル状態でアクセルを踏み込むことにより、排気ガスの勢いで内部の水が押し出されます。

ただし、この操作を行う際には、マフラーの後方に人や物がないことを確認してください。

勢い良く水が飛び出るため、安全に注意して行いましょう。

この方法でマフラー内の水の大部分を排出でき、その後の運転でマフラーが熱くなれば残った水分も蒸発します。

 

洗車や雨の水量なら入っても問題ない

外部からマフラーに水が、大量に侵入した場合の影響についても考えてみましょう。

日常的な洗車や雨程度でマフラー内に入る水量では特に問題は生じません。

しかし、意図的にホースで大量の水をマフラーに流し込むような行為は、エンジン内部への水の侵入リスクを高め、エンジントラブルの原因となり得ます。

 

過去にはスポーツマフラーにおいて、水を含ませることで排気音を増幅させる効果があるとされたこともあります。

しかし現代のマフラー設計では、そのような現象は期待できません。

マフラーは隔壁構造を採用しており、水がグラスウール室に侵入することはありません。

YouTubeなどでマフラーに水を流し込む動画が見られることがありますが、これらは故障のリスクを高めるだけであり、実行は避けるべきです。

 

冠水した道路は避ける

冠水した道を走行中にマフラーが水に浸かると、車は大きなリスクに直面します。

マフラーは排気ガスを外へ放出する役割を持っているため、出口が水で塞がれるとエンジン停止(エンスト)の原因になります。

マフラー内に侵入した水が完全に乾けば、直接的な問題はないかもしれません。

しかし泥水の場合、泥が内部に残り、後々の不具合の原因となる可能性があります。

 

実際、冠水した道を走行することは多くのリスクを伴います。

マフラーだけでなく、車の吸気系統に水が侵入するとエンジンが損傷する恐れがあります。

電気系統の故障や車体の錆びなど、さまざまな問題が発生する可能性が…。

したがって、水没した車は価値が著しく低下します。

冠水した道を運試しで通過するのではなく、安全を優先して遠回りをするなど、リスクを回避することが推奨されます。

 

ディーゼル車は水の量が少ない

ディーゼル車においても、マフラーから水が全く出ないわけではありませんが、ガソリン車に比べてその量は少なめです。

これは、ディーゼル燃料に含まれる水素の量がガソリンに比べて少なく、燃焼時に生成される水の量が少ないためです。

さらにディーゼルエンジンではガソリンエンジンで使われている三元触媒のような装置が使用されないため、これも水が少なくなる一因です。

 

まとめ

この記事では、マフラーから水が漏れる現象について深掘りしました。

マフラーに水が入ること自体が問題だと思われがちですが、実際には自動車の正常な機能の一部であることが分かりました。

しかし、冠水した道を無理に通過することや、遊びでマフラーに水を流し込む行為は避けるべきです。

マフラー内部に水が溜まる状況は望ましくなく、車の性能や安全性に影響を及ぼす可能性があります。

 

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