トラックドライバーが交通事故を起こした場合、責任は個人か会社どっちにある?

トラックドライバーが交通事故を起こした際、責任の所在は個人か会社か…?

トラックの修理代や積荷の商品の損害は、自腹で負担しなければいけないのか?

これらの疑問について解説します。

 

ドライバーを雇っている企業の責任になる

「交通事故を起こしたドライバー」は賠償責任を負います。

しかし、事故により他人が怪我をしたり、信号機や道路設備が破損したりすると、賠償金額は大きく膨らむことがあります。

これは個人が自腹で支払うには、大きな負担です。

そこで「業務上の責任」が問題となります。

言い換えると、ドライバーを雇っている企業の責任になります。

 

事故はドライバーのミスが原因のことが多いですが、雇用主(企業)の「労働環境」や「運転技術の指導」も重要です。

「ドライバーが運転していなければ事故は起きなかった」という見方や、「労働環境がドライバーに負担をかけていたのではないか」という疑問が生じることもあります。

しかし、事故の責任を明確にするのは難しいです。

「ドライバー」「雇用主」「被害者」など、関係者の状況を考慮し、弁護士や保険会社を通じて検討されます。

最終的には、ドライバーに一定の責任があると判断されることもあります。

 

損害の自己負担の割合は企業によって変わる

次に事故による損害に関して説明します。

事故が起こると、衝突した物(建物の壁、ガードレールなど)の損害や、トラックの修理費、荷物の損害や代替品の費用、運送費などが問題になります。

実際にはドライバーが全額を負担することは少なく、多くは企業との折半が一般的です。

ただし企業によってはポリシーや判断基準が異なります。

ドライバーの自己負担の割合は企業によって変わるため、一概には言えません。

 

法的な責任は通常はドライバーの過失となる

交通事故の際の法的な責任の所在は、どのように決まるのでしょうか?

民法709条に基づくと、通常は「従業員」、すなわち「ドライバー」が責任を負います。

この条文は、他人の権利や法的に保護される利益に損害を与えた場合、損害賠償責任を発生させます。

運転ミスは通常ドライバーの過失とされますが、事故が「不十分な睡眠時間」や「劣悪な労働環境」に起因する場合、責任は企業にも及びます。

このような状況では民法715条が適用され、事業主は従業員が業務実行中に第三者に与えた損害に対して賠償責任を負います。

 

賠償金額の決定方法

法律では賠償金額の具体的な比率は定められていないため、これは企業とドライバー間の問題になります。

損害の割合は、主に企業側で決められることが多いです。

企業はトラックの修理や物損箇所に対し、高い保険料を避けるために保険を使わないこともあります。

これは運送業の保険料が高く、頻繁に使用され事故率も高いためです。

 

運送業界は価格競争による運賃の低下で経営が困難になることが多く、特に小規模な運送業者は厳しい状況に直面しています。

高い保険料は経営に影響を及ぼすため、修理費用は企業が負担し、時にはドライバーにも一部の負担を求めることがあります。

適切な負担比率は30~50%とされていますが、これを超える場合、企業はブラック企業と見なされることがあります。

 

賠償金額の割合に関する変動

企業側に明確な責任があり、劣悪な労働環境が認められる場合、賠償義務は免除されることがあります。

長時間労働や休息時間の不足など、労働基準法違反が明らかになった場合、これは特に顕著です。

運送業界の労働環境には、改善の余地がまだあります。

ブラック企業から離れることは、重大な事故を防ぐために重要です。

良心的な運送会社も多く存在し、危険な環境に気づいた場合はすぐに行動することが推奨されます。

しかし問題がある企業ほど従業員への圧力が強い傾向にあります。

 

商品損害における運転手の責任と支払い事例

配送中の商品事故による、自己負担は珍しいことではありません。

運送会社によって、支払い方式には違いが存在します。

例えば、ドライバーが保険の自己負担額のみを支払う場合や、事故による損害全額を負担することもあります。

商品そのものが無傷であっても、「外箱の破損」を損害とみなされることがあります。

ここで言う「外箱」とは、商品を包む外側の段ボール箱のことです。

外箱が破損した際、荷主によって対応は異なり、外箱の代金請求や商品の買取を行う場合もあります。

 

商品損害の請求を受けた際には、商品を引き取ることができる場合もあれば、代金の支払いを行いながら商品を受け取らないケースも存在します。

ディスカウントストアなどでは、外箱が破損しているが中身は無事な商品もよく見られます。

商品損害の処理と同様に、車両事故も扱われます。

一部の運送会社では、事故時に保険の自己負担額をドライバーに請求し、時には全額をドライバーに自腹負担させる厳しい対応をする会社もあります。

大手会社では事故発生時に無事故手当の削減などで対応するのが一般的です。

 

さらに会社によってはさまざまな対応があります。

例えば一件の事故に対して商品価格の特定のパーセンテージ(月最大5000円まで)を支払ったりします。

次回ボーナスの削減などの規則を設ける会社もあれば、ドライバーの過失が原因の場合、追加のペナルティを課す会社も存在します。

 

実体験:事故でペナルティを経験した実例

多くのトラック運転手は交通事故のペナルティについて詳しくないため、実際に事故に遭遇すると、「これが正しいのか?」と疑問に思うことがあります。

ここからは事故でペナルティを経験した、ドライバーたちの実例体験を紹介します。

 

事故で無事故ボーナスを失う

長距離ドライバーのKさんは、事故により無事故ボーナスを失いました。

勤め先の会社は、毎月15,000円の無事故手当を支給していました。

しかし、1年前の追突事故で前方車両に衝突し、過失が認められました。

これにより、無事故手当の受給資格を失いました。

無事故手当の受給資格を失う期間は2年間です。

無事故手当の条件は会社が決めるため、約40万円の損失となりました。

私にとってはペナルティかもしれませんが、交通事故の状況は様々であり、多角的な視点で見てほしいと思います。

 

事故による免停で職を失う

筆者の元同僚、Tさんは事故で免停となり、前職を退職しました。

前の職場で人身事故を起こしました。

居眠り運転が原因です。

けが人が出たため、保険会社が対応しましたが、免停通知が届きました。

当初の免停期間は60日でしたが、講習を受けて30日に短縮されました。

 

しかし、会社から解雇されました。

未使用の有給休暇を使い対応を検討しましたが、破損したトラックの修理費の5%の弁償が求められました。

さらに同族経営の会社であったため、社内での無視が始まり仕事が与えられず、結局退職しました。

 

150万円の修理費用を自腹で負担した

トラックドライバーであるOさんは、過去の事故により150万円の修理費用を自腹で負担した経験を持っています。

その時は本当に大変でした。

事故を引き起こしてしまい、会社からトラックの修理代150万円を請求されました。

その金額は支払い不能で、会社は給料から天引きすると告げられ、完済するまで働き続けることに。

 

その後、退職し他の人から話を聞いたところ、この処理方法が違法であることがわかりました。

しかし、その時には会社が倒産しており、社長も行方不明。

労働基準法違反だったとしても、何の対策も取れない状況でした。

保険会社も関与していたにもかかわらず、保険料の上昇を理由に全額を自分で負担する羽目になったのです。

と、Oさんは振り返っています。

 

事故を機に運行回数が減り給与ダウン

もう一人のドライバー、Mさんは事故をきっかけに運行回数が減り、給料が下がった経験を語っています。

前の会社での事故後、運行回数が減少し給料も低下しました。

物損事故が原因で、修理費や荷物の損害を自分で払うよう求められました。

しかし話し合いの結果、修理費は負担しなくてもよいことになりました。

 

しかしその後、運行回数を意図的に減らされ、給料も大きく下がりました。

就業規則を無視した嫌がらせが酷く、結局は他へ転職することになりました。

Mさんは述べています。

 

事故がボーナスや昇進評価に悪影響

Yさんは交通事故が自身のボーナスや昇進に大きく影響を与えた経験を持っています。

私が引き起こした交通事故のため、ボーナスが減少し、昇進も同僚より1年遅れました。

事故の一因は私にもありましたが、スマホを見ながら運転していた対向車が主要な原因でした。

私は前方不注意と予測不足だと言われましたが、これは予測できない事故でした。

免許は停止されず、仕事は続けることができましたが、無事故手当は失い、賞与も同期の2/3になりました。

 

就業規則には従っているとのことでしたが、細かい規則は読んでいなかったので不満を感じました。

しかし時間が経過すると、無事故手当は再び支給されるようになり、現在は同僚と同じ立場で賞与に差はありません。

しかし事故時のペナルティに関しては、周囲にも理解してもらえるよう伝えています。

 

まとめ:専門家に相談することも必要

運送業界で働く人々にとって、事故は避けがたいリスクです。

通常、事故による責任は運転手にありますが、過失の程度によっては免許停止以外のペナルティも考えられます。

ただし、法的な問題があるペナルティも存在するため、勤務先の規則をよく理解し、その合法性を確認することが大切です。

個々のケースが複雑な場合は、専門家に相談することをお勧めします。

また、会社の体制に改善の余地が見られない場合は、転職も考慮に入れるべきです。